カラスを知りカラス対策に活かす
コラム9 カラスの知られざるおもしろ生態
この記事を書いたのは
代表取締役 塚原 直樹
博士(農学)
宇都宮大学特任助教
群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』。
個人ウェブサイトはこちらカラスの知られざるおもしろ生態
カラスはその賢さ故か、時に面白い行動をする。今回は、その一部を紹介したい。
電線に逆さまにぶら下がる。滑り台や雪山を滑る。動物の尻尾をしつこく引っ張る。これらのカラスの変わった行動には、特に意味があると思えない。ヒトが出す栄養価の高い食べ物を容易に摂取できるようになったことで、余暇がうまれ、これら遊びと思われるような行動をするようになったのかもしれない。
カラスが幼稚園の石鹸や神社のろうそくを持ち去るという行動がある。この行動には、石鹸やろうそくが油脂から作られるからなのか、カラスはそれらを脂と見間違えているのではないかという説がある。というのも、カラスは脂質が大好物だ。カラスにとって雨に濡れることは、体温の低下に繋がるため死活問題である。そこで、カラスは全身を防水コーティングするために、尾羽の付け根にある尾腺という器官から脂を出し、全身の羽に塗りこむ。カラスの脂質への嗜好性の高さは、防水用の脂を摂取するためなのだ。
レールの上への置き石という非常に危ない行動もある。ある鉄道会社は、頻発する謎の置き石事件に悩まされていたが、監視カメラを仕掛けてみると、なんと犯人はカラスであった。これは、カラスの貯食と呼ばれる行動が引き起こした事件であった。貯食とは、食べ物を手に入れた際、すぐには食べず隠しておく行動だ。その隠し場所は、木の洞や屋根、街頭スピーカーなど多種多様である。線路に敷かれたバラストの隙間は、食べ物を隠しやすい場所のようだ。ただ、カラスもどこに隠したか忘れてしまう事があるらしい。そのため、目印として石をレールの上に置いたと考えられている。
私が一番好きなのは、カラスがシカの耳にシカの糞を詰める行動だ。シカにとっては迷惑千万だと思うが、当のシカはあまり気にしていないようだ。非常に滑稽な行動だが、なぜこんなことをするのか。貯食に似た行動ではあるが、カラスはシカの糞を食べていない。実は、貯食から派生した行動として、カラスはお気に入り(?)の物を隠すことが知られている。このシカへの迷惑行為もその一つと考えられる。残念ながら私はこの行為を目にしたことがなく、いつか実際に見てみたい。この行動を見かけた方は、ぜひご一報いただきたい。
本コラムは、農業共済新聞2019年12月2週号に掲載された内容を転載しております(一部修正している場合があります)。
紙面は以下よりダウンロードできます。
カラスの生態をもっと詳しく知りたい方に
CrowLab代表の塚原の著書『カラスをだます』では、身近だけど意外と知られていない、誤解されているカラスの生態や、また身近なもので今すぐできるカラス対策なども紹介してますので、ぜひご覧ください。
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代表取締役 塚原 直樹
博士(農学)
宇都宮大学特任助教
群馬県桐生高校卒業。CrowLab代表取締役。宇都宮大学にて杉田昭栄教授のもと、カラスの音声コミュニケーションの研究に従事し、博士取得。宇都宮大学特任研究員、総合研究大学院大学助教を経て、現在は、宇都宮大学特任助教。カラス研究一筋20年。主な著書にNHK出版『カラスをだます』。
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